糸島市在住 自毛植毛をされた男性

“私は自毛植毛で自信を取り戻した”
                                           糸島市在住 男性
はじめに

 樹木はしっかりしているのに当然咲くべき花が咲かなくなった・・・。当然あるべき鬣(たてがみ)を失った男の悲しみは万国共通であろう。
 アメリカンインディアンの酋長は例え身体は強健でも鬣が衰退すれば自ら身を退いたと伝えられる。鬣は勇者のシンボルであり、誇りでもあるのだ。アメリカンインディアンに禿頭が少ないのは、幼少の頃よりホホバオイルで髪の手入れをするなど日頃の髪に対する特別な習慣があったのかもしれないし、人生も短かったのかもしれないが彼らの頭髪に関する意識の強さは例えば敵を拷問に掛けるとき、頭髪を頭皮ごと剥離するという奇習に現れている。恐らく相手が頭皮を剥がれたら二度と立ち上がれないだろうと信じていたからであろう。
 我が国でも大昔は遺骨よりも遺髪を大切にする時期があった。髪は男女を問わずその人が死んでも分身として大切に扱われてきた経緯がある。
 そしてご他聞に漏れず筆者もトシと共に鬣を失い、意気消沈してしまった。
今や人生80年といわれる時世に40歳代で禿頭になると、残る半生は惨めこの上ないことになることは自明である。本稿は私が鬣と自信を取り戻すのに悩み、そして起死回生した経緯を著したものである。同様の悩みを抱えるご同輩の参考になれば幸いである。

結論

 話が長くなりそうなので先に結論を述べる。解決策は後頭部に残っている自毛を禿頭部に移植することである。移植された自毛は一生涯生育する。一方でカツラは一時的な偽装に過ぎず、長年の着用は返って頭皮を駄目にしてしまう。また市販の育毛剤や養毛剤の類はまず効能がないといってよい。
 つまり、カツラや育毛剤に長年費用をかけるのなら、自毛移植の方が確実で逆にコスト安であり、そして何よりも強調したいのは、本当の鬣を取り戻したことで精神が行動的になることである。そう、インディアンの勇者のように!

経緯

 それでは筆者が禿頭から鬣を取り戻すまでの全過程を一挙に報告する。内容には個人差があるので100%同意を得ることはないだろうが、大部分のご同輩には納得していただけると信じるものである。
 私は45歳くらいのとき偶然新幹線の三面鏡で自分の後頭部を見た。するとつむじを中心に地肌が透けていたことに仰天した。というのも若い頃から床屋にいけば必ず毛量が多いので髪を梳いて貰っていたくらい髪には自信があったからである。それから色々と市販の育毛剤を試しては自己満足していたが、管理職になって部下の結婚披露宴に呼ばれるようになった。で、初めの頃であるが、たまたま後姿が写真に撮られていたのだった。案の定後頭部はカッパ頭になっていた。その後もカッパ部分は前部に拡大し、遂には披露宴に招待されるのが苦痛になってきた。また仕事で色々な場面に遭遇する時にも常に頭を気にするようになり、次第に仕事の自信までも喪失しそうになってきた。

 私はついにカツラを装着することを決断した(その当時は植毛技術があることを知らなかった)。いきなりフサフサになると不自然なため、最初は残っている自毛に人工毛を括り付ける方法で徐々に増毛し、最終的にカツラを被るようにした。
 私は一時的にせよ鬣を取り戻した。自信が蘇り、披露宴にも快く出るようになった。
 しかし、別の問題が出てきた。一つは写真を撮るとカツラの人工毛は変な発色をすること、友人と風呂や温泉に行けなくなったことである。そのために高価な人毛によるカツラに切り替えたが、ヘルメットを被ったり夏場の蒸れやかゆみには閉口した。更にはカツラの止め金で局部の頭皮が全くのハゲになることや蒸れにより更に禿頭が進行した。そして凡そ10年間装着したことで、遂には止め金を挟むべき自毛まで失ってしまった。このような惨めな頭で街の床屋には行けず、カツラのメンテナンスも兼ねて後頭部の毛が伸びるとカツラショップでの調髪を余儀なくされ、当然その経費は街の床屋の3~4倍になった。

 カツラショップは止め金の代わりにテープなどで接着することを勧めたが、頭皮に密着することで余計に蒸れる、着脱が面倒で余計な経費も掛かることから私は途方に暮れた。ただ、救いは定年が近まったことで、定年したら思い切ってカツラを外そう。もう体力も衰えているから自信がなくなってもいいやと半ば捨て鉢的な考え方に傾いていた。
 それに長年カツラを着用したことから、他人がカツラを装着しているかどうかは一目で分るようになっていた。つまり、我が身も他人からはそう思われていたということであり、このことがますますカツラ嫌いに繋がっていった。
 蛇足であるが、その間の種々の育毛剤は全く効果が無かった。

 そして決定的な事件が数件起こってしまった。一つは急激な原因不明の頭痛で救急病院に走ったときである。いつもの習慣でカツラをつけて医者の前に座り症状を説明したら頭部の断層撮影をするといわれた。で、恐る恐るカツラを着けていることを言うと、それは外さないと撮影できないと言われ、止む無く看護婦達が大勢居る中で外した。当然彼女達のクスクス笑いが否応無く耳に入り、非常な屈辱を味わった。二つ目は眼底網膜の病気になりいよいよ入院せねばならなくなったことである。このときは仕方なくカツラを外して入院したが、会社の同僚には絶対に見舞いに来ないよう告げざるを得なかった。同僚が不審がったが、治療中は顔を伏せておかねばならないという口実ができて窮地を逃れた。
 私は覚悟した。年齢的にこれからは急な入院や場合により急死することもあるだろう。自分でカツラを装着できなくなったらどうにもならない。従って定年したらカツラを外そうと!

 しかし、それも甘かった。冒頭に述べたように人生80年。60代で老け込む訳にはいかない。同窓会やOB会もある。まだまだ社会に出て活動せねば人生が勿体無い。温泉にも行きたいし旅行もしたい。そうも考えるようになった。

自毛植毛との出会い

 そんなある日、病院でスポーツ新聞を見ていたら『自毛植毛』の記事が目に入った。私は生唾をゴクンと呑み込んだ。最後の頼りはこれだ!と思った。帰宅後、インターネットでアイランドタワークリニックを検索し、競輪で有名な中野浩一氏の手術体験談を繰り返し読んだ。そして読めば読むほど植毛の確実性に惹かれ、数日後には迷わずアイランドタワークリニックの門を叩いた。
 クリニックでは爽やかな女性がエスコートしてくれて、あれよあれよと言う間に専門医師のカウンセリングと手術費用の相談並びに事前血液検査が行われた(血液検査は無料である)。

 専門医師は的確に質疑に応じてくれた。私の場合は血糖値が高めであるため健康管理に努めること、後頭部にはしっかり自毛が残っているので移植はOKであることなどであった。移植するにはまず健康でなければならないと言われたことがすごく素直に頭に入った。私はまるで子供のように真面目に血糖値を上げる要因を除くべく、食事、運動、飲酒などの諸要素を管理し万全の体調で手術台に向かったのである。

手術の経緯
 私は注射1本でも逃げ回るほど血を見るのが苦手であったが、カツラ生活から脱却して鬣を取り戻すのだと自分に言い聞かせて決死の覚悟で手術台に座った。
 案ずるより生むが易し・・・はこのことか。手術は麻酔を打ってボーッとしているうちに終わってしまった。この手術は後頭部の頭皮をひも状に切り取って毛根を採取し、それを禿頭部に埋め込むストリップ法と呼ばれるもので、一般には頭皮が縫い合わされて突っ張る感じがするが、私の場合は殆ど感じなくて移植部の出血も少なく、手術は無事済んだ。
 その後、医師から言われたショックロスといわれる脱毛も殆ど起こらず、植毛部は数ヶ月で伸びてきたし、毛根採取部の縫合傷も全く判らないほどに消えてきた。
 私は再び自分自身の中に生気が宿ってきた感じを覚えた。よしっこれだ!と感じたのである。ただ、トシなので頭皮が硬くストリップ法ではまだ毛量が足らないので、半年後に2回目のダイレクト法という手術を受けた。この方法は後頭部全体から健康な毛根をくり抜いて、禿頭部に移植するものである。既にダイレクト法で手術に慣れた私は何のためらいも無かった。
 この方法は痛みが少ないが手術部を剃毛せねばならないというハンディがあった。幸い私は定年していたので冬季を選び、毛が生えるまではニット帽で過ごせた。現役の人は部分カツラなどを利用すればよいだろう。

鬣の復活

 2回の植毛で頭部全体にトシ相応の毛髪が蘇ってきた。髪が伸びるまでは待ち遠しかったが、4ヶ月くらいして久しぶりに街の床屋で調髪してもらった。
 床屋は私が植毛しているとは全然気づかなかったようである。私はヤッターと心で叫んだ。その次は別の床屋、更にその次は更に別の床屋に調髪してもらったが、いずれも全然気づかれなかった。
 私は絶望の淵から蘇ったのだ。新たな鬣を取り戻し、今では老人相手であるが、楽器を弾き語りするボランティアを楽しくしかも自信たっぷりにしているのだ。

 昔、部下の結婚披露宴で幾度と無く人前で挨拶をした。当然衆目はこちら1点に注がれる。こちらは全身に神経を張り巡らさざるを得ない。当然それは頭部も含めてである。
 翻って今、ボランティアで老人の前で歌ったり楽器を弾いたりする。衆目がこちら1点に注がれる。人前に立つという点では全く同じであり、当然頭部にも自然に目が配られる。しかし、そこには全くの自然の頭髪がある。誰も疑わないし、今では自分でもそれが植毛だったということを忘れるくらいである。
 こうして、私は堂々と帽子などを被らずに戸外を歩き、温泉にも平気でいけるようになった。あってはならないことだが、交通事故などで病院に運ばれても自然体で治療を受けられるのだ。私は自信と共にカツラ装着という不安や緊張感からも開放されるようになったことを心から喜んでいる。

考察

 植毛手術には当然費用が掛かる。個人差も非常に大きいので高くつく人、安く済む人それぞれであろう。一方で育毛剤やカツラに投じた費用を清算してみた。
 私の場合、約10年間であらゆる育毛剤を試したが、その費用は凡そ60万円にもなっていた。またカツラ代(カツラは消耗するので買い替えが必要である)と調髪代で240万円掛かっていた。そうすると合計で300万円もかけていたことになるので、自毛植毛費用が仮に300万円かかったとしても同額なら植毛の方が絶対に有利であると言うことが出来る。更に付け加えるなら精神的肉体的により健康になるメリットが大きいということである。
 私の場合は手術前からアルコール類は殆ど呑まなくなった。これは我慢ではなくほぼ習慣になったからである。メタボリックな身体は血糖値を悪くし、様々な手術にもデメリットが大きいからである。喫煙はかなり前から止めていたのですっきり爽やかな毎日を送っている。

これから植毛しようという同輩諸氏へ

 私は今般の植毛を機に、素人ながら勉強した。何故男性は早期に禿るのか、又個人差があるのか、原因は何か、どうすればよいのかなどである。
 私なりの結論はこうである。
1. 男性ホルモンは青年期から分泌が盛んになってくる。同ホルモンにはテストステロンというホルモンがあって、これが毛母細胞膜にある5α―レダクターゼという酵素で還元されて5α―ディヒドロテストステロン(DHT)に変わる。
2. DHTは全身の毛母細胞に作用して蛋白質の合成を促進させるので、ヒゲや胸毛が濃くなる。
3. しかし、頭頂部の毛根に限っては女性ホルモンに支配されて居り、DHTは相反して蛋白質の合成を妨げる。ただ、5α―レダクターゼの分泌には個人差があって、筋骨隆々の男性で髪もフサフサの例もあるし、なよなよでも禿頭になる男性も存在する。これらは酵素の働きの個人差によるものと考えられる。
4. ところがDHTの影響をあまり受けない箇所がある。それが後頭部の毛根である。
5. 従って、後頭部の毛根を頭頂部に移植してもDHTにより薄毛になってしまうことはない。(病気や放射線などの別の要因を除く)
6. 後頭部の自毛であるから移植しても生体が拒絶反応を起こすことは無い。
火傷などで皮膚を移植するのと同様である。
 
おわりに

 私は随分遠回りをしたが、やっと禿頭から脱却でき、自由を謳歌している。
これはアイランドタワークリニックさんの御蔭である。禿頭や薄毛で悩む同輩諸氏は勿論のこと、若い人にも積極的に植毛をお奨めしたい。それは若い人程頭皮が柔らかいから毛根採取がしやすいこと、手術に際して血糖値や血圧値の心配が少ないことが上げられるからである。
 前述したように男性ホルモンの作用や還元は遺伝的要素が強く、個人の努力では限界がある。よって自毛を移植することで容易に克服できるのである。

                                

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